RSS
 

Archive for 2011

太宰治『ダス・ゲマイネ』をスマートフォン用に電子書籍化。

03 2月

太宰治作第三弾『ダス・ゲマイネ』です。


     一 幻燈

        當時、私には一日一日が晩年であつた。

 戀をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであつた。それより以前には、私の左の横顏だけを見せつけ、私のをとこを賣らうとあせり、相手が一分間でもためらつたが最後、たちまち私はきりきり舞ひをはじめて、疾風のごとく逃げ失せる。けれども私は、そのころすべてにだらしなくなつてゐて、ほとんど私の身にくつついてしまつたかのやうにも思はれてゐたその賢明な、怪我の少い身構への法をさへ持ち堪へることができず、謂はば手放しで、節度のない戀をした。好きなのだから仕樣がないといふ嗄れた呟きが、私の思想の全部であつた。二十五歳。私はいま生れた。生きてゐる。生き、切る。私はほんたうだ。好きなのだから仕樣がない。しかしながら私は、はじめから歡迎されなかつたやうである。無理心中といふ古くさい概念を、そろそろとからだで了解しかけて來た矢先、私は手ひどくはねつけられ、さうしてそれつきりであつた。相手はどこかへ消えうせたのである。
 

※本文より冒頭部分を引用 

 

 

 

無料ダウンロードはこちらから
 

太宰治『ヴィヨンの妻』をスマートフォン用に電子書籍化しました。

02 2月

太宰治作第二弾『ヴィヨンの妻』です。2009年に映画化もしまして、『パンドラの匣』同様に太宰治の代表作の一つとして数え上げられている名作です。

 


 

 あわただしく、玄関をあける音が聞えて、私はその音で、眼をさましましたが、それは泥酔の夫の、深夜の帰宅にきまっているのでございますから、そのまま黙って寝ていました。
 夫は、隣の部屋に電気をつけ、はあっはあっ、とすさまじく荒い呼吸をしながら、机の引出しや本箱の引出しをあけて掻きまわし、何やら捜している様子でし たが、やがて、どたりと畳に腰をおろして坐ったような物音が聞えまして、あとはただ、はあっはあっという荒い呼吸ばかりで、何をしている事やら、私が寝た まま、
「おかえりなさいまし。ごはんは、おすみですか? お戸棚に、おむすびがございますけど」
 と申しますと、
「や、ありがとう」といつになく優しい返事をいたしまして、「坊やはどうです。熱は、まだありますか?」とたずねます。
 これも珍らしい事でございました。

※本文より冒頭部分を引用 

 

 

 

無料ダウンロードはこちらから
 

太宰治『パンドラの匣』を電子書籍化しました。

01 2月

 

君、 思い違いしちゃいけない。僕は、ちっとも、しょげてはいないのだ。君からあんな、なぐさめの手紙をもらって、僕はまごついて、それから何だか恥ずかしくて 赤面しました。妙に落ちつかない気持でした。こんな事を言うと、君は怒るかも知れないけれど、僕は君の手紙を読んで、「古いな」と思いました。君、もうす でに新しい幕がひらかれてしまっているのです。しかも、われらの先祖のいちども経験しなかった全然あたらしい幕が。

※本文より引用

青春小説の金字塔、太宰治の『パンドラの匣』を電子書籍でご用意しました。スマートフォンでも快適に読めるようレイアウトされています(もちろん大型の端末でも快適に読むことが出来ます)。少しずつコンテンツを増やしていこうと思っております。

 

無料ダウンロードはこちらから
 

iNovel作成サービスを始めました。

01 2月

 

夏目漱石『坑夫』ルビ付き

09 1月

つづいて夏目漱石の『坑夫』です。もちろん無料にてダウンロードしていただけます。iNovelの読みやすさをぜひご体感ください。

先日の記事の話になりますが夏目漱石先生はいいですね。先日アップした『三四郎』を読み終えたのですが、本当に面白かったです。与次郎がなあ、与次郎が、ほんとーにいい味を出しています。「偉大なる暗闇を書いた」零余子がいつのまにか主人公になっているところ(P500)は笑いましたし、ラストの野々宮さんが招待状を破り捨てたところ(P576)はさりげないのに印象深かったですし、美禰子が小川にストレイシープと囁きかけるところ(P253)なんて、漱石先生!漱石!と小躍りしたくなりましたよ。ほんとすこぶる良い読書体験をさせていただきました。

 

『坑夫』のダウンロード先はこちら